ディズニープラスで配信始まったので観た。レイプシーンが生々しいと怖いから観たくないって気持ちもあって、一日悩んで結局観た。
感想書こうと思いつつ、けっこう時間がかかってしまった。ちなみに観たのは配信始まってすぐくらいのとき。
印象に残ったのが王妃とピエール(ベンアフ)の奥さんの、あのなんとも言えないような表情。権力者の妻って立場上、下手なこと言えないし、かと言って黙っておくのも耐えられないって表情に見えた。
実際あの二人は旦那に何も言ってないんだけど(少なくとも映画上では)、あの複雑な表情が、それぞれ自分たちの立場を物語っている気がする。
そうやっていろいろなことに目をつむらないと、あの二人も生きていられないんだろうね。ピエールは妻がそばにいるのに乱交三昧だけど、奥さんはたぶん何も言ってないと思うし。
マルグリット(ジョディ・カマー)に同情しつつも、それを表明できなくて、もどかしい気持ちを抱えている感じ。しかも二人とも妊娠してるんだよね。そしてマルグリットも妊娠すると。
この映画に出てくる女性たちが妊娠してるのも、時代的に女性は子供を産む道具って意味を表している気がする。
もう一人の妊婦がマルグリットの友達マリー。でもマリーはマルグリットを非難しているの。「あなたル・グリ(アダム・ドライバー)のことカッコいいって言ってたじゃないの!」って。
しかも裁判でマルグリットの不利になるってわかってて証言してるのもえげつない。
このマリーの感情は嫉妬だね。憧れのル・グリとセックスしたマルグリットが憎たらしくてしゃーないんだよ。それがレイプだったとしても、嫉妬が抑えられないんだよ。
けっこうマリーみたいな人っていると思う。現代でもSNSあたり見てると、自分より良い思い(勝手な解釈でも)してる人たちが憎たらしくてしゃーない人が溢れてるし。
性犯罪者を擁護する女性って珍しくないもんね。
そしてお義母さんも、マルグリットに対して「黙っておけばいいのよ」って否定的なの。「自分もそうしてきた」って、経験者だけどマルグリットとは違う道を歩んだ女性。
こういう人は老害っていうんだろうね。自分も苦労してきたからお前も同じように苦労しろって。
同情しつつ何もできない権力者の妻たち、嫉妬で非難する友達、静かに否定してくる義母と。マルグリットには味方が誰もいません。同じ女性でもそれぞれの事情からマルグリットに何もしてくれません。
で、どの女性の気持ちも理解できるんだわ。くやしくて相手を裁いてほしいってマルグリットの気持ちはもちろん、何もできない妻たちや黙っておけばいいのにってわざわざイヤミ言うお義母さんの気持ちもわかる。
自分の立場を守る意味でも、声を上げる女性の存在がうとましくて仕方がない。弱いからこそ、男に守ってもらわないと生きていけない。女は男の性欲を処理して子供を産む存在なんだと自分を無理やりにでも納得させている。穴と袋なんだってことを突きつけられる。
そして残念ながらマリーの気持ちもわかる。どんな状況だろうが僻みって感情は湧いてきてしまう。特にそれが友達とか身近な人なら一層憎しみが強まる。そばにいるからこそ、例えばコンプレックスを刺激されるから。
だからって裁判で不利になることがわかってて証言するほどの行動にかき立てられる感情は理解できない。常軌を逸しているし。
マット・デイモンが自分のことしか考えてないクズとか、アダム・ドライバーの勘違いっぷりが本気でキモイとか、出てくる男がゴミってことは当然なんだけど、登場する女性についてもいろいろ考えさせられる映画でしたな。